中医学臨床 逆流性食道炎
概要
逆流性食道炎とは、胃から胃酸が逆流することにより食道部分に炎症が起こる疾患です。近年、食生活の欧米化やピロリ菌感染率の低下、高齢化などにより患者数は増加傾向にあります。
逆流性食道炎は、すぐに命に関わるような病気ではありませんが、諸症状により生活の質が低下するだけでなく、ごくまれに食道がんの原因となることもあるため、注意が必要です。
原因
●胃酸分泌の増加
胃酸分泌の増加を引き起こす要因
欧米型の食生活で肉を多く摂取するようになりました。肉は魚に比べ消化に胃酸を多く必要とするため、分泌量増加の要因になりやすいです。
●ピロリ菌感染率の低下
ピロリ菌をそのままにすると、胃の粘膜の萎縮を引き起こし胃酸の分泌が低下します。除菌治療の普及によって、ピロリ菌の感染率は大幅に低下、胃酸の分泌が増加していると考えられます。
●逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。
●逆流につながる要因としては以下のものがあります。
体重増加、脂肪分の多い食物、カフェイン入り飲料や炭酸飲料、アルコール、喫煙、特定の薬
下部食道括約筋の機能を妨げる薬の種類としては、抗コリン作用のある薬(多くの抗ヒスタミン薬や一部の抗うつ薬など)、カルシウム拮抗薬、プロゲステロン、硝酸薬などがあります。糖尿病やオピオイドの使用などによって胃の内容物を送り出すのが遅い場合も逆流を悪化させることがあります。
症状
胸やけ、げっぷ、のどの違和感、イガイガ、ヒリヒリ、呑酸。胃もたれ、食欲低下。
治療
プロトンポンプ阻害薬 (PPI) がよく使用されます。プロトンポンプ阻害薬は胃酸分泌を抑制する効果があり、胃酸の逆流を抑える。
日常注意
食事内容の改善。
食習慣の改善:就寝前の食事を避けるなど。
前かがみの姿勢を避ける。
減量する。
逆流性食道炎の中医学辨証治療
肝胃不和型
症状:ストレスや心情不安定で胸骨裏、或は胸やけ、呑酸、げっぷ、上腹部が重い、两脇痛い、女性は乳房張り痛い、月経不順。舌淡、苔薄白、脈弦。 治法:疏肝理気、和胃降逆
方薬:逍遥散
常用薬:柴胡、当帰、白術、茯苓、梅花、月季花、枳壳、佛手、郁金各10克,白芍30克,甘草5克。
脾虚気滞型
症状:上腹部が重い、張り、痛い、呑酸、剣突下或胸骨裏灼熱、げっぷ、食欲がない大便不調。舌淡、苔白、脈沉弦。 治法:健脾理気、和胃降逆
方薬:理中湯加减
常用薬:党参、白術、陳皮、茯苓、法夏、黄芪各10克,炙甘草、干姜、小茴香、丁香、吴茱萸各5克。
気虚血瘀型
症状:顔色が良くない、疲れやすい,のどが渇き,持続性胸骨裏が痛い、舌淡暗い、瘀点あり、脈沉渋。 治法:益気補血、化瘀散?。
方薬:桃紅四物湯加减。
常用薬:桃仁、柴胡、当帰、川芎、白芍、生地、三七、元胡、蒲黄、枳壳各10克,紅花、甘草各5克。
気郁痰阻型
症状:げっぷ、胸不定処痛、気持ちが良い時軽い,胸骨の裏側胸焼け,嘔吐痰涎,飲み込み困難,咳痰或は咽部灼熱痛,舌苔白滑,脈弦滑。 治法:開郁化痰,理気和胃。
方薬:半夏厚朴湯加减。
常用薬:柴胡、当帰、白術、茯苓、生姜、枳壳、紫蘇、郁金各10克、白芍30克、甘草5克。
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